うに思われるんです。頭がよくて悧口だけれど、余り無邪気な所のないのがいけないんです。向い合っていると、こちらの心の底まで見透されるような気がする時があります。そのために、私の方にもいろんな僻みが起るんです。余り考えすぎるからいけないんだとは知っていますけれど、隆ちゃんが始終暗い影を背負ってるように思われて仕方ありません。その影が……。」云ってるうちに周平は、持て余してる自分の心を保子の前にぶちまけてしまいたい気になっていった。「その影が私を脅かすんです。なぜそんなにこだわるのか、自分でも分りません。私は悪いことをしてしまいました。」
「悪いことって、何なの。」
「悪いことです。あなたや横田さんの信用を裏切ってしまったのです。」
「どうして?」
何等の疑念もなさそうに澄み返ってる彼女の眼を見ると、周平はさすがに云い出しかねた。じっと眼を伏せて唇を噛んだ。
「どうしたの、中途で黙り込んでしまって。云ってごらんなさいよ。私にも大抵分ってるような気がするけれど……。」
「済みません」と周平は云った。「吉川さんの日記を見たのです。」
「ええ? 吉川さん……。」
「吉川さんの最後の日記を見たので
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