てああ憎しみの情が湧いてくるのか、周平は自ら惑った。隆吉の存在を邪魔にする理由はいくら考えても正当には見出せなかった。彼は隆吉に対する気持を置き換えようとつとめた。
 然しそれが出来なかった。病気がだいぶよくなった隆吉は、背を円くして日向の縁側に蹲まりながら、露《あらわ》な鋭い眼付をして周平の方を見上げた。周平が和らいだ顔付をしてると、外に出たいとか植物園や動物園に行きたいとか云って謎をかけた。周平が眉をしかめてると、いつまでも黙っていた。或る晩、外には雨がしとしとと降っていた時、隆吉は突然こんなことを云い出した。
「井上さんはいつまでも家に居てくれるの?」
 周平は黙っていた。
「そうすると僕は嬉しいんだけれど……。」
「なぜ?」と周平は問い返した。
「叔父さんがそう云ってたよ、井上さんはいろんなことを知ってるから、話をして貰うがいいって。」
「僕より叔父さんの方がいろんなことを知ってるよ。」
「叔父さんは駄目だ。ちっとも相手になってくれないんだから。」
「じゃあ叔母さんがいるじゃないの。」
 隆吉はなんとも答えないで、周平の顔を見上げた。周平は胸の奥で不安な気がした。
「僕は隆ちゃ
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