んがすっかりよくなったら、下宿へ帰るつもりです。」と彼は冷かに云った。
「いやだ。」と隆吉は駄々をこねるように叫んだ。「僕叔母さんに頼んだの、井上さんがいつまでも家に居てくれるようにって。すると叔母さんは、あなたから井上さんに頼んでごらんなさいって云うんだもの。……僕一人ぽっちだからつまんないや。」
そういう彼の変に大人じみた凸額を、周平はじっと眺めた。そして其処に保子が来ると、隆吉は今迄の話を忘れてしまったかのように、けろりとした顔付で黙り込んだ。周平は騙されたような気がした。反感が起ってきた。その為に保子へも妙に口が利けなかった。彼は苛立ってくる心持を懐いて、二階の室に逃げて行くの外はなかった。
然し二階に行っても、保子と隆吉とを置きざりにしてきたことが気にかかって、永く落着けなかった。耳を澄すと、家の中はひっそりとして、軽い雨の音があたりを支配していた。彼は室の中を歩き廻った。狭苦しかった。隣りの書斎へもはいっていった。そしていつのまにか彼は、本箱の抽斗を見い見い歩いていた。そこに吉川の日記がはいってるのだった。悲痛な文字がありありと頭に映じてきた。やり場のない憤激の念に駆ら
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