ってるのも余りに意気地がなかった。相手の考えにはおかまいなしに、自分の思う所だけを云ってしまわなければ承知しないというような、保子の一徹な眼の光りから、周平は視線を外らしながら、種々に弁解し始めた。――今迄十円だったのが、今度俄に二十円になっていて、而も一言の断りもない以上は、勘定の誤りかも知れないと考えるのは至当であること、金銭問題を口にするのは固より嫌いではあるが、それを口実にして不当の利得を着服するのは、人格的に下劣な行いであること、一言の断りさえあれば、その好意を喜んで受けるだけの雅量はあること、受けるものなら正当に受け、受けてならないものなら立派に返すのが、本当だと思ってること、そういう自分の行為を非難されるわけはないこと、などを彼は廻りくどい調子で説いた。そして最後につけ加えた。「私はどう考えても、あなたから叱られるような訳はないと思っています。」
「いつ私があなたを叱って?」と保子は云った。
「でも腹を立てて非難するのは、叱るのと同じじゃありませんか。」
「私ちっとも腹を立ててやしないわ。けれど、こちらの気持をそのまま受け容れて貰えないのは、不快なことじゃなくって?」
「
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