べこべに向うから揶揄《からか》われてることを感じた。彼は率直に云い出した。
「昨日《きのう》、お礼の包みの中に二十円はいっていましたよ。それで余分の半分だけ、返しに上ったんです。五円紙幣と十円紙幣とを間違えられたのではありませんか。」
「そのことで今日《きょう》わざわざいらしたの」
「ええ」
「あなたは嘘つきね」
「いえ、実際二十円あったんです。」
「そんなことじゃないわよ」と保子は云った。「昨日あなたは、お金のことは口にするのが厭だと云っといて、今日はお金のことでわざわざ来るなんて、嘘つきだわ。それに、人があげたものを返しに来るなんてことが、あるものですか。」
変に調子がきびしかったので、周平は呆気《あっけ》にとられてしまった。何が保子の気に障ったのか、彼にはどうしても合点がいかなかった。彼はただ黙って、彼女の顔を見ていた。
周平が黙ってるのを見て、保子は止めを刺すようにずばりと云ってのけた。
「あなたが気持の上で嘘をついたり、変な他人行儀をしたりするんなら、私の方からもそうしてあげるわ。」
何という無茶な云い方だろう、と周平は思った。と共に、それが何だか嬉しくもあった。然し黙
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