た。あんぐりうち開いてる※[#「臣+頁」、第4水準2−92−25]が、呼吸の度にかすかに動いて、虚弱そうな薄い高い鼻が、蝋細工のように静まり返っていた。
 その姿を、周平は小憎らしく思った。次には不気味に感じた。余りに生に執着しすぎてる、というように感じた。それに対抗するような気で、やたらに噴霧を注ぎかけてやりたくなった、後はアルコール・ランプの芯《しん》をかき立てた。コップの食塩水が少しでも減ると、すぐに缶からなみなみと注いだ。その盛り上った水面に、明るい障子が小さく映っていて、潮が引くように徐々と中低くなっていった。
 噴霧筒の水滴を受くる下のコップが一杯になっても、周平はまだ吸入を止そうとしなかった。保子が側から云った。
「下のコップが一杯になったからもう沢山でしょう。」
 周平は黙ってアルコール・ランプを吹き消した。
 隆吉は顔を濡れ手拭で拭いて貰って、また床の上に横わった。呼吸が非常に滑かになったらしく、胸の奥で静かに息をしていた。
「よかったわね。」と保子は云っていた。「こんなに沢山したんだから、もうじきに起き上れるようになりますよ。」
 室の中は湯気が籠ってむし暑かった。
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