った。まごまごしてる所を、保子からはじっと、隆吉からはちらと、両方から見られたのを知った。彼は咄嗟に心にもないことを云った。
「吸入をしてあげましょうか。」
「そう。」と保子はすぐにそれを引取って、隆吉の方へ屈み込んだ。「井上さんが吸入をして下さるから、おとなしくするんですよ。ね、いいことね。」
 隆吉は彼女の方を見ないで、周平の顔をじっと見て、それから首肯《うなず》いた。周平は機械的に吸入器の用意をした。
 隆吉は床の上に坐って、真白なタオルに包まれた。タオルから顔だけ出して、口を開きながら待っていた。保子がその後ろから軽く身体を支えてやった。周平は机の上に据えた吸入器を、隆吉の方へ向けた。食塩水の噴霧《きり》がさっと注ぎかかると、隆吉は咳き入った。それを一生懸命に押えつけたらしく、蒼い頬にかすかな赤味がさした。その上へ水滴が一面にたまっていった。睫毛の先の水滴は、瞬きをする毎にたらたらと頬へ流れた。唾液の交った水が、唇からすうっと糸を引いたように垂れてくるのを、保子がコップで受けてやった。隆吉はその中にあってじっとしていた。顔も渋めずにひたすら噴霧《きり》を吸い込むことにつとめてい
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