上ってきた、惨めな存在だという気がした。吉川の手記が頭の中に蘇ってきた。この子のために吉川はどんなに苦しんだろう、この子が生きてる間は吉川の苦しみも生きて残るのだ、保子の身にも暗い影がつき纒うのだ、とそんなことを周平は思った。彼の胸には、吉川と隆吉とは父と子であるということがぴたりと来なかった。孤児であるということも、彼の心を少しも動かさなかった。何故か? と彼は自ら反問してみた。答えは得られなかった。そして、じっと隆吉の寝姿を見ていると、不当な存在だと思えてきた。その不当な存在に対して、復讐してやりたいような気持になっていった。……そういう暗い気分に浸っているうち、彼は二三度保子からじっと眺められたのを感じた。隆吉を踏みにじって保子の前に身を投げ出したかった。坐ってるのが苦しくなってきた。それでも腰を落着けていた。如何にも執拗に坐り込んでるのが我ながら感ぜられた。そのためになお立ち上れなくなった。
「井上さん、」と突然保子が云った、「どうしてそう変な顔をしてるの。」
 云われて始めて周平は、自分が泣き出しそうな顔をしてるのに気づいた。何気ない答えをしたかったが、その言葉が見つからなか
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