に、喫驚するほどすぐ近くに、張りのある保子の声が響いた。
「井上さん、まだ寝てるの。お起きなさいよ。もう何時だと思って?」
周平は黙っていた。
保子は周平の枕頭の押入をあけて、何かをしきりに探しているらしかった。暫くすると、彼女は押入の襖をぴたりと閉めた。
「井上さん、お起きなさいよ。」
「ええ。」と周平は思わず答えてしまった。
一寸間が置かれた。また保子の声がした。
「いやだわね、布団を被ってしまって。加減でも悪いんですか。」
布団が少し引きのけられた。周平はされるままに任して、顔を横向けながらちらと保子の方を見上げた。
「あら、」と保子は叫んだ、「泣いてるのね、どうしたの。」
その言葉で周平は初めて、自分の眼や頬に涙がたまってるのを気づいた。するとまた、後から涙が出て来るような気がした。咄嗟に寝間着の袖で眼を押し拭いながら、じっと保子の顔を眺めた。その起きたばかりの清い素肌の顔の中には、黒目がちの澄みきった眼が、朝の光りを受けて静かな輝きを見せていた。それがちらと瞬いたかと思うと、刺すような鋭い光りに変った。
「どうしたというの、え?」
眉根がぴくりと動いて、彼女の顔は
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