生は耳まで赤くなりました。
「僕だって君達の愛情を尊敬することは知っているよ。」と荘一清は快活にいいました。「現にその余沢も感じている。種明しというのはここのことだが、君と僕とを一緒に方家へ招待さした策源地は、彼女にあると思うよ。なぜなら、彼女は僕達に逢いたがっているんだ。ところで、それはまあいいとして、厄介な口実がくっついている。例の、新時代の女性の玩具、あれを持って来てほしいという秘密な使者が来た。彼女にとっては、僕達を逃がさない口実だろうが、僕達にとっては、彼女への義務ということになる。どうだろう、あれが至急手にはいるかね。金はここに用意してきてるが…。」
汪紹生はじっと考えこんでしまいました。
「君から彼女へ手渡すがいいと思うんだがね……。」
汪紹生はなお考えこんでいました。それから突然立上って叫びました。
「よろしい、彼女との約束を果そう。」
柳秋雲の所謂玩具というのは、実は、一挺の小さな拳銃のことでありました。
柳秋雲については、いろいろな説がありますが、それらのいずれもが不確かなもので、いわば彼女は一種神秘な影をいつも身辺に帯びていました。
彼女はその生家も縁
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