白塔の歌
――近代伝説――
豊島与志雄
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)浮子《うき》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「臣+頁」、第4水準2−92−25]
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方福山といえば北京でも有数な富者でありました。彼が所有してる店舗のなかで、自慢なものが二つありました。一つは毛皮店で、虎や豹や狐や川獺などをはじめ各種のものが、一階と二階の広間に陳列されていまして、北京名物の一つとして見物に来る旅行者もあるとのことでした。他の一つは茶店でありまして、昔は帝室の茶の御用を務めていたという由緒が伝えられていました。
この方福山が、四十日ばかり南方に旅して、そして帰ってきましてから、自邸で、十名ほどの人々を招いて小宴を催しました。
方福山は賑かな交際が好きで、人を招いて宴席を設けることはよくありましたし、またそういう口実はいつでも見出せるものでありますが、然し、此度の招宴には何か特殊な気配が感ぜられました。方家の執事ともいうべき何源が口頭で伝えまし
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