でした。
その歌の先生について、面白いことがありました。或る時、陳慧君と二人の談話のなかで、真珠を粉にしたものをのめば肌が最も綺麗になるという説が、思い起されまして、先生はそれを真実であると主張し、有名な俳優でそれを実行してる者もあると確言しましてから、是非ためしてみられるようにと陳慧君に勧めました。陳慧君は心を動かされたらしく、真珠の粉の効果の真否を、いろいろの人に尋ね、それぞれの意見を、柳秋雲にも伝えて相談しました。すると柳秋雲はいいました。
「歌の先生は、きっと、真珠を沢山持っていらして、売りたがっていらっしゃるのでしょう。買ってあげましょうよ。」
その言葉で、真珠の粉の説は立消えになってしまったのでした。
それを聞いて、荘太玄は愉快そうに笑い、荘夫人は感心して眼を細めました。
けれども、柳秋雲にいわせますと、彼女のその小さな皮肉も、実は荘太玄を学んだものでありました。
嘗て、市長が荘太玄を訪ねて来まして、市長に推挙されかかったこともある彼に、北京繁栄策をいろいろ話し、ついでに、名所旧跡や記念建造物への観光客を世界各地から誘致するための、有効な方法をも相談しました。する
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