と青磁の置物と朱塗りの聯板と毛皮の敷物とにかこまれて、呂将軍と方福山が酒をのみながら話をしていました。柳秋雲と方美貞との姿は見えませんでした。
 高賓如は真直に呂将軍の方へ行きまして、煙草を一本手に取っていいました。
「胃袋の強健な者ほど勇気が多い、という閣下の説によりますと、どうも、吾々若い者の方が勇気に乏しいようです。」
 呂将軍は笑いながら髭をなでました。どこからかいつのまにかそこへ出て来た何源が、高賓如の煙草の方へマッチの火を差出しました。

 なか一日おいて、午後、柳秋雲がふいに荘家へ訪れて来ました。――荘大人がお身体がわるい由だからお見舞に、というのでしたが、それはただ口実にすぎないことは明らかでありました。
 方福山からの招待には、身体は何ともなかったが、少し差支えがあって出られなかった、とはっきり荘太玄がいうのを、柳秋雲はそれについては返事もせず、よく解っているということを示しました。
 荘太玄と夫人とは、やさしい笑顔で彼女に接し、彼女も心安らかな態度でありました。荘一清はちょっと挨拶をしたきり、どこかへ出て行きました。
 方福山のところの宴会の話を、荘夫人が尋ねますと
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