能を示しそうな柳秋雲をも加えて、それだけあれば、北京で大芝居がうてると思うのも、無理はないさ。」
「そんなことを呂将軍は考えてるんですか。」
「いや、考えてるものか。引きずられてはいるだろうが……。」
「では、誰が考えてるんです。方福山ですか。」
「方福山はまあ進行係というところだね。立案の方はどうやら陳慧君にあるらしい。とにかく、あの二人はいい組合せだ。」
「そして、あなたも、それに加担してるんですか。」
「僕が加担してたら、もっとうまくやるよ。柳秋雲に歌をうたわしたり、あれは可哀そうだった、あんなへまなことはしない。僕はただ傍観者にすぎないんだ。」
「傍観者……それでいいんですか。僕はあなたを軽蔑しますよ。」
「なあに、軽蔑は最後になすべきものだ。事の成行を楽しんで観てるという時機もあるさ。ただね、僕は君達に自重して貰いたいんだ。自重してくれ給え。お父さんが今晩来られないのはよかった。」
「父はそんなことを知ってるんでしょうか。」
「御存じではあるまい。然し、うっかり洩らしてはいけないよ。僕と君との間だけの秘密だ。」
「それは勿論です。だが……僕達、汪紹生と僕とを招かしたのは、柳秋
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