とに、方福山の隣席にいた老人が加わりました。
汪紹生が一人で庭の方へ出て行ったようでしたから、荘一清と高賓如とは連れ立ってその方へ行ってみました。
晴れやかな秋の夜で、星辰が美しく輝いていました。池のない広庭には、植込や置石が多く、築山の上の小亭にぽつりと電灯が一つともっていました。
高賓如は両手を差上げ伸びをしてから、冷かな批判の調子でいいました。
「今晩の宴会には、欠けたものが一つあったね。」
「何ですか、それは。」
「君のお父さんが来られなかったことだ。」
「父は近来、ここの人達をあまり好まないようです。」
「それは当然だ。然し、ここの人達にしてみれば、君のお父さんは最も大切な客だった筈だ。」
「なぜですか。」
高賓如は荘一清の方を振向いて、その真実怪訝そうな眼付を見て取ってから、いいました。
「考えてみ給え。荘太玄の名望と、方福山一家の財産と、それから君達自身はどう思ってるか知らないが、青年知識層の精鋭と見られてる一方の代表者たる、荘一清と汪紹生、それから自分でいうのも変だが、呂将軍の知嚢としてのこの高賓如、それになお、社交界の花形と独りで自惚れてる陳慧君、将来特異な才
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