笑を浮べて、鄭重な調子で答えました。
「私はまた、閣下はいつも軍服を召していられることと、思っておりました。」
その言葉のあと暫し時を置いてから、呂将軍は突然、はっはっはと大きな声で笑いました。
側にいた高賓如はちらと眉をひそめました。汪紹生はびっくりしたように呂将軍の顔を見上げました。呂将軍はなお得意気にも一度高笑いを繰返しました。
平服をつけてることが、呂将軍を、へんに如才ないようにまたは愚鈍なようにも見せるのでした。
食卓で、呂将軍はまた同じような高い笑いをしました。食物の話の時、彼は珍らしく言葉を続けて、嘗て太原で経験したという事柄を披露しました。――饑饉の年のことでしたが、数名の僚友と、そこの料理店で飲んでいますと、豚肉の煮込みの皿の中から、人間の足の爪が二つ三つ出て来ました。一同は酔っていましたので、その爪を興がって、酒杯に入れて乾杯したというのです。
その話のあと、ちょっと言葉がとだえました時、呂将軍ははっはっはと高笑いをしました。
すると、少し離れた席から、陳慧君の声が聞えました。
「まあ、閣下は、作り話もお上手でいらっしゃいますこと。」
呂将軍はまたはっ
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