準2−92−25]のとがりが目立って怜悧そうであり、正面から見れば頬のふくらみが目立って柔和そうでありました。
「あんたは時おり、別々な二人のひとに見えますよ。」と荘夫人は微笑して秋雲の顔を眺めることがありました。
その別々な二人のひとが、やがて、一人のひとにまとまって、新時代の若い女性を形造るようになりました。荘家の温良な雰囲気はまた新時代の自由性をも許容するものでありまして、荘太玄の高い学徳を山に譬えれば、その麓には、荘一清を中心にした新新文芸一派の若芽が自由に伸びだしていました。汪紹生は殆んど日曜毎にやって来ましたし、其の他の青年達が、時には女性も交えて、集ってきました。そしてそれらの人々に、柳秋雲も立交るようになり、遂には仲間の一人と数えられるようになりました。
柳秋雲は新新文芸を愛読しながら、自分では一度も文章を書いたことがありませんでした。また、その思想的な論議に加わることもありませんでした。然し彼女の控え目な言葉は、いつも強い熱情の裏付けがあり、そして形象的でありましたので、この一派に不足がちな感覚的要素を加える働きをしました。彼女の言葉から示唆されたと覚しい文章も、
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