をあんなに伸ばすなんて、ずるいや」
「鬼瓦」はそういってつめ寄ってきました。みんなもそれに味方しました。
「鼻を伸ばしといて踊らせるのはずるい」
見馴れない子供は、ただにこにこ笑っていましたが、みんなからずるいずるいとあまりいわれますと、それじゃも一度やり直そうといいました。みんなも賛成しました。
「やり直そう、初めから……。鼻を伸ばすのはなしだよ」
そしてまたみんなは一しょに、「だるまさん、だるまさん」を始めました。ところが、最初に笑い出したものから順々に一人ぬけ二人ぬけしてるうちに、いつのまにか、見馴《みな》れない子供の姿が消えてしまったのです。
「おや、あの子供はどこへいったろう」
「いない。消えちゃった」
みんなはきょとんとしてしまいました。いくら探してもどこにも見えません。
「わははははは……」
頭の上で笑い声がしましたので、見上げてみると、空いっぱいの大きな顔が笑っています。かと思うまに、すぐに消えてしまって、青々とうち晴れた大空ばかりになりました。
みんなはぼんやり空を見上げていましたが、次にはおかしくなって、くくくくっと、それからあはははっと、声をそろえて笑い
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