天狗笑
豊島与志雄

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)ある山裾《やますそ》に

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#ここから2字下げ]
−−

      一

 むかし、ある山裾《やますそ》に、小さな村がありました。村のうしろは、大きな森から山になっていまして、前は、広い平野にうつくしい小川が流れていました。村の人たちは、平野をひらいて穀物《こくもつ》や野菜を作ったり、野原に牛や馬を飼ったりして、たのしく平和にくらしていました。
 村の人たちは皆仲よしでした。それで、子供たちも皆お友だちでした。大人《おとな》たちがたんぼや牧場で働いている間、子供たちは一しょにあつまって仲よく遊びました。
 ある夏の初め、子供たちはいつものように、一しょにあつまって、村のうしろの森のはずれの原っぱで、土盛《つちも》りをしたり輪投げをしたりして遊んでいましたが、それにもあきてくると、近頃はやりだしたにらめっこを始めました。それは遠くの町からつたわってきた遊びで、これまでまだ村には知られてなかったのです。新しい遊びなだけに、子供たちは非常におもしろ
次へ
全10ページ中1ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
豊島 与志雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング