坐って、膝《ひざ》の上に両手を握りしめて、身がまえをしました。
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だるまさん、だるまさん、
にらめっこしましょう、
わらうとぬかす、
一二三……うむ。
[#ここで字下げ終わり]
まわりのものまでみんな息をつめました。二人はじっとにらめっこをして、どちらも笑い出しません。「鬼瓦《おにがわら》」はほんとに鬼瓦のような顔つきをしてみせましたが、見馴《みな》れない子供はびくともしませんでした。そしてるうちに、ふいに見馴れない子供の鼻がぴくぴく動き出しました。が、「鬼瓦」の方も笑い出しません。するとこんどは、ぴくぴく動き出した鼻が、ぬーっと長く伸びだしました。見ていたものはびっくりしました。が、「鬼瓦」はまだ笑い出しません。するとこんどは、長く伸び出た鼻が、「鬼瓦」の鼻先までやってきて、ゆらゆらふらふらとおかしな恰好《かっこう》で踊りだしました。
とうとうたまらなくなって、「鬼瓦」はぷーっとふきだしました。みんなはわっとはやし立てました。がふしぎなことには、見馴れない子供の鼻は、勝つが早いかすっと引っ込んで、もとの通りになってしまいました。
「ずるいや、ずるいや。鼻
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