まきました。穀物《こくもつ》や野菜や牛や馬を買いに来る商人の外は、めったに人がよそから来たことのない、へんぴな村なんです。それなのに、ひょっこり子供が一人出て来たのです。
「君は誰だい」
「どこから来たんだい」
「何しに来たんだい」
「一人で来たのかい」
そんなふうに、みんなはかわるがわるたずねました。けれどその見馴《みな》れない子供は、何にも答えないで、ただにこにこ笑っているばかりでした。そしてやがて、ふいにいい出しました。
「僕もにらめっこにいれてくれないか」
「ああいいとも」
みんなは喜びました。そして見馴れない子供と一しょに、また「だるまさん」を始めました。
ところが、その見馴れない子供が強いのなんのって、どんなおかしな顔をしても笑わないんです。二十人いたものが、一人ぬかされ二人ぬかされして、しまいには、一番強いので、「鬼瓦《おにがわら》」とみんなからあだなされている子供と、見馴れない子供との、二人っきりになりました。
「鬼瓦しっかりやれよ」
「初めて来たものに負けるな」
村の子供たちはそういって、わいわいはやしたてながら、二人のまわりを取りかこみました。二人はきちんと
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