まいました。
「何だろう」
みんなびっくりして、それからふと恐くなって、村の中へ逃げかえりました。
二
そういうことが時々おこりました。うっかり「だるまさんのにらめっこ」をしてると、空いっぱいの大きな顔が頭の上で大きな声で笑うのです。びっくりして見上げると、そのとたんに顔も笑い声も消えてしまうのです。
初め子供たちはそれを恐がりましたが、だんだん馴《な》れてくると、かえっておもしろくなってきました。顔が出て来ないと、何だかさびしいような気さえしました。
「今日はきっとあの顔が出て来るよ」
「出て来るかしら」
「出て来るとも。出て来るまでやろうや」
そしてみんなで、村のうしろの森はずれの野原にあつまって、円《まる》く輪になって坐りながら、「だるまさんのにらめっこ」を始めました。が何度やっても、空いっぱいの大きな顔が出て来ませんでした。みんなは意地《いじ》っぱりになってなおやりつづけました。
するうちに、いつのまにどこから来たのか、見馴《みな》れない子供が一人、横の方につっ立って、にこにこしながらみんなの遊びを見ています。
みんなはふしぎに思って、その子供を取り
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