、少しずついろんなことがわかってきました。大きな羽うちわを見たという者が出てきました。赤い高い鼻を見たという者が出てきました。緋《ひ》の衣《ころも》を見たという者が出てきました。何か人間の形をした大きなものが暗い空をふわりふわり飛んでいた、という者が出てきました。
「天狗《てんぐ》だ!」と誰かが言い出しました。
なるほど、いろんなことを考え合わせると天狗に違いありません。きっと貪欲《どんよく》な天狗がやって来て、羽うちわであかりをあおぎ消して、人のこしらえたごちそうをさらって行ってるに違いありません。村の人達は天狗だときめてしまいました。
ところで、いくら天狗だからといって、そのまま放っておくわけにはゆきません。村の人達はいろいろ相談して、その天狗を捕《つか》まえようとしました。
が、なかなかそうはまいりませんでした。戸の隙間《すきま》からでもはいり込んできて、音も立てずにごちそうをさらってゆくほどの天狗《てんぐ》ですもの、自由自在の術を知っていて、人間の手に捕《つか》まるものではありません。村の人達は、網を張ったり、罠《わな》をこしらえたり、棒を持って待ち構《かま》えたり、いろ
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