交際《つきあい》の宴会に出たり、取引先を廻ったりするだけで、隙でぶらぶらしていて、学生時代から好きだった「芸術」をなまかじりしたり、文学者や画家たちのお伴をして飲み廻ったり、尤も、そんな時には金は私が払うことが多かったのですが、とにかく、年にも似合わないよい身分の若旦那でしたが、それでも、さすがに考えましたね。こんな風に、とき弥と無駄な金を使ってるよりは、いっそ彼女に一軒家をもたしたら……。それに、文学者や画家なんていう者は、無遠慮なのが多くて、私ととき弥との間を知っておりながら、酔っ払うと、彼女に戯れかかったりして、それをまた彼女が平気で笑っているのが、私には心外でもありましたし、その上、彼女は丸抱えの身で、堅くしているわけでもないことが、よく分っていました。
「どうだろうね、さっぱり足を洗って、家でも一軒もつようにしては……。」
「ええ、いいわ。」
 それが当然だとでも云うように、至極あっさりしています。なお仕合せなことには、彼女がいくらか面倒をみてやっていた郷里名古屋の母と妹とが、近頃文房具屋をはじめて、それが案外よくいって、その方の心配が一切なくなったところでした。
 少々無謀
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