多く働いて、ある時、酔ったまぎれに、そこの仲居にそれとなく探りを入れてみると、大丈夫ですよ、とは云うものの、本人の気も引いてみたくなりましてね……。
「ああ酔っちゃった、今晩泊っていってもいいかしら……。」とまるで他人事《ひとごと》のようでした。
「ええ、いいわ。」
至極簡単に、あっけなく片附けられてしまったものです。そしてその晩、万事が、やはり、至極簡単にあっけなく……。
妙なもんでして、こっちの気をもたせるような、何かこう少しでも愛想を示されたら、私もそれきり忘れたかも知れませんが、あまりあっさりとやられたものですから、却って心残りがして、それがきっかけで、度々通うようになりました。そして度重るにつれて、私の心は、ぬるま湯にでもつかるように、彼女に囚われていきました。全く、ぬるま湯でした。彼女は何一つ私に逆らうことがなく、何一つ私の気持にさわることがありません。二人はほんとに気が合ってるんだな、とそう思うようになりましたよ。
ところで、いくら、質屋の若旦那……という年配でもありませんが、親父がまだ元気で、店の方のことは大体見ていてくれますし、私は責任の軽い身で、親父の代りに、
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