、泣きたくなってくるんだ。自分が呪わしく、汚らしく、そして淋しくなって、もういてもたってもいられなくなる……。自分が悪いんだと、自分を責める。そして結局、彼女に忠実であろうと決心する。酒もやめ、煙草もひかえ、あらゆる執着をたち、自分を清く澄み返らせて、彼女に恥じないだけの者になろうと決心する。だが、その決心は、この次から……この次からと、順々に先に延されて、やはり僕は酔っ払い、ふしだらの限りをつくすんだ。」――おれは眉をひそめた。――「そういうわけで、こんどきりだということが、却ってふしだらになってしまう。そして昨晩みたいなことになる。ほんとに済まなかった。許して呉れ給え。どんな駄々をこねたか、よく覚えていないが、さんざん君を困らせたらしい。そしてあんなことになっちゃって……。僕は今朝、あのホテルのてっぺんで、全くやりきれない気持になった。君が黙って帰ってくれたのも、却ってよかった。自分が惨めになればなるほど、僕にはいいんだ。それで決心が実行出来る。自分を溝《どぶ》の中にぶちこみたいくらいだ。僕は君に感謝してる。みんな許してくれ。ほんとに君に感謝してることで、許してくれ。そして……朗か
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