があるといいなあ。」
「ママがあった方がいいだろう。」
「ママは死んだんだよ。」
「でも、また次のママが出来たらいいじゃないか。」
「出来てみなけりゃ分らないや。」
「おばさんは……山根さんは……君は好きかい。」
「好きだよ。」
「あの人にママになってもらったらいいじゃないか。」
「だって、ありゃあおばさんだよ。」
「それをママにするさ。」
「ママとはちがうよ。」
「どうちがうんだい。」
「ちがうよ。ママはママ、おばさんはおばさんだ。」
「そして、パパはパパだ。」
「パパはたいへん忙しいって、おばさんが云ってたよ。だから、ゆうべ帰って来られなかったんだって……。」
「なんで忙しいんだい。」
「いろんな御用があるんだって……。そして、豪いんだそうだよ。」
「おばさんとどっちが豪いんだい。」
「パパの方が豪いさ。でも、おばさんはいい人だよ。すこし厳格かな……だけど、とてもやさしいし……いろんなことを知ってるよ。」
「いやなところはないかい。」
「よく分らないけれど……香水をつけると、匂いが強すぎるし、香水をつけていないと、匂いがうすすぎるし……へんだよ。」
「へんて、なにが。」
「ママは、
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