に聞いたことのないような朗かな笑いだった。振向いてみると、石を投げる李の恰好がおかしいというのである。注意してみると、なるほど、李は大きく腕を振り廻しはするが、投げるとたんに、肩口からほうり出す恰好になるのだった。
「李さんたら、まるで赤ん坊みたいよ。」と云って君枝はまた朗かに笑った。
 李は吉村をまねようとして、その赤ん坊みたいな動作を何度も繰返した。
 その折の君枝の珍らしい朗かな笑いが特別に吉村の心に残ったほど、いつも平凡な散歩にすぎなかった。
 吉村は朝から机に向っていたが、頭が疲れてくると、午後など、丘の方へぶらりと出て行った。丘の中腹の小径を辿ってゆくと、初めて李に出逢った野原のところへ出る。それから少しゆくと、丘の先端で、先方の丘との間に盆地をなしてる畑地が目下に見え、右手は海に展けている。
 そこの、藪影の草の上で、日向ぼっこをしてるかのように蹲って、雑誌など見てる李を、吉村はよく見かけた。
 二度目に逢った時、李はにこにこして、吉村の問いに答えるのだった。
「鳶を捕《と》るんです。」
「え、鳶を……捕れるかね。」
「捕れるつもりです。」
 彼が説明するところによると、
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