鳶と柿と鶏
豊島与志雄

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)捕《と》る

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   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「足へん+宛」、第3水準1−92−36]
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       一

 丘の上の小径から、だらだら上りの野原をへだてて、急な崖になり、灌木や小笹が茂っている。その崖の藪に、熊か猪かと思われるようなざわめきが起り、同時にわっと喚声があがって、一人の青年が飛び出して来、次で子供が三人飛び出して来た。
 吉村はびっくりして、小径につっ立っていた。
 見ると、青年はたしかに李永泰である。無帽で、運動シャツ、学校の教練ズボンのお古らしいのをつけている。三人の子供は村の者らしい。李は吉村に気がつかないのか、子供たちとふざけながら、片手で栗の実をもてあそんでいた。
 吉村がじっと見ていると、やがて先方でもその視線を捉えたか、李は吉村の方をすかし見たが、ほうというように口をあけて、野原をつっきり走って来た。
「吉村先生ですか。こんなとこに、どうしていらしたんで
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