す。」
 随分久しぶりな筈だが、そんなことはどうでもよいのであろう。吉村が此処に来てふのが、ただ不思議らしい。
 一週間ばかり前から、急な仕事をもって、三週間ばかりの予定で、その海辺の粗末な宿屋に来てることを、吉村は微笑みながら話した。
「あんなとこで、仕事なさるのですか。」
「どうして。」
「あすこは、つまらないでしょう。」
 その口振が、どうやら、小説家などという者はいつも華かな雰囲気にばかり住んでるものだと、そういう風なので、吉村はただずばりと云ってやった。
「あすこは、秋になると、安直でいいよ。」
 気持がはっきり通じなくて、眼をしばたたいてるのへ、吉村はたたみかけた。
「君はまた、どうして此処へ来てるんだい。」
「僕ですか、別荘の監督です。」
「かんとく……。」
「ええ。志田さんの別荘、ご存じありませんか。」
 真顔で云ってるのかどうか分らなかったが、よく聞いてみると、志田さんの家族の人たちがその夏来ていて、東京へ帰って行く時、李は雑用の手伝いに来たが、そのまま当分、別荘番のところに居残ってるものらしかった。
「おーい、みんなやるよ。」
 李は振向いて、草原で遊んでる子供たち
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