もつけていた。久七は竹の棒を取って来て、其処に屈み込んで息切れを押えながら、椿の実を叩き落した。落ちてくる円いやつが、一寸水に沈んでまたぽかりと浮いた。
いい加減叩き落してから、池の上に浮いてるのを、棒の先でかき寄せようとした。その腰が伸びた拍子によろめいて、ぼちゃりと片足と片手とで池にはまった。ぶくぶくと泡《あぶく》が立つ泥の中にひょいと身を起すと、池は浅くて案外足元が泥の中にしっかりしていた。
かき寄せた椿の実を[#「 かき寄せた椿の実を」は底本では「かき寄せた椿の実を」]両手にしゃくい上げて、池の中から匐い出した。足の泥を濁り水でじゃぶじゃぶ洗い落すと、ぶるっと身震いがした。
嬉しくも悲しくもないきょとんとした顔付で、家の中にはいっていった。薄暗い中に、竈の下の燃え残りの火が赤く見えていた。両手の椿の実を上り口に置いて、沢庵を一度に二切れかじりながら、火の方へよろめき寄った。木の切株の腰掛へ臀を落付けて残り少ない火で股火をしてると涙がぼろぼろ流れた。
二
つる[#「つる」に傍点]は何だか落付かない様子だった。九分一《くぶいち》くらいの麦飯を焚いてる間にも、二
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