、配置を乱して一方へ片寄せられてる卓子や椅子……見ようによっては空き部屋とも思えるその長方形の広間に、なにか嘲笑の空気が漂っていました。それは何から醸し出されたものでしょうか。独特な思想を持ってる者や、常識的な共通な思想を持ってる者や、何等の思想をも持たない者たちが、各自に勝手なことを饒舌りちらしていたからでありましょうか。甘いのを好きな者や、酸っぱいのを好きな者や、辛いのを好きな者たちが、各自に飲んだり食ったりしていたからでありましょうか。新らしい靴をはいてる者や、破けた靴をはいてる者や、代用靴をはいてる者たちが、各自に自分の靴のことなど忘れてしまっていたからでありましょうか。寒くて震えてる者や、熱くて汗をかいてる者や、熱くも寒くもない者たちが、各自にそのことを自意識していたからでありましょうか。それは兎に角、彼等の中にまた上に、嘲笑の気がたなびいていて、それが、道化てみろ、もっと道化てみろと、囁いてるようでありました。そして彼等は各自に、道化者になりたがりながら、一方ではその気持ちを自嘲していました。
木原は窓のところへ行って、それを開けました。外はへんに明るく、次に白く見えまし
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