た。雪が薄く積っていて、まだちらほら降っていました。
 長身の白井がやって来て、上から木原の肩を捉えました。
「おい、寒いじゃないか。雪見はあとにして、こっちい来いよ。まだウイスキーがたくさん残っている。」
 白井の口笛に歩調を合せて、二人は酒の方へ行きました。
 その向うで、山崎が道化ていました。
 彼は照子の手を執って、一人でダンスのまねをしていました。
「意外ですねえ、あなたがダンスを知らないなんて。」彼はくるりと廻りました。「いや、そんな筈はありません。」またくるりと廻りました。「然し、僕と踊って下さらなくても、一向構いません。」またくるりと廻りました。「森村家の御令嬢で、三浦画伯の愛弟子で、そして……。」またくるりと廻りました。「そのお手を執らして頂いただけで、僕は充分に光栄です。」
 彼はステップを踏んで、そしてくるくると廻りました。
 そういう山崎に、片手の先を任せながら、照子は椅子にかけたまま、心持ち微笑を浮べてるように見えました。貴婦人がサロンで男に応対する態度とも、言えないことはありませんでした。彼女は眼鏡をかけていましたが、その枠縁が目頭のところで白銀色にちらちら
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