会がすんだらすぐに来て頂きたいと、三浦先生からのおことづけでした。御食事の用意もして待っているからと、仰言っていらっしゃいました。」
 木原が黙っていますと、彼女は口早に囁きました。
「電話が通じなくて、困りましたのよ。いらっしゃいますわね。」
 木原は機械的に頷きました。
 三浦さんが至急逢いたがってるとすれば、それは多分、照子に関することであろうかと、木原は考えました。然し、照子はいつもの通りの様子で、心に何の懸念もなさそうでした。――木原はもう酒をたくさん飲んでいる上に、更にまた飲みました。そして酔いました。照子とのことを近頃いろいろと思い悩んでる上に、前夜は思わず読書にふけって殆んど眠らなかったし、なにか苛立った憔悴のうちにありましたので、なおのこと酔いました。そしてソファーにもたれてとろとろとしましたが、眼がさめてみると、広間の光景が、同僚たちの有様が、へんに生々しく眼に映じてきました。三浦さんの家へ行ったものかどうかと、頭の奥のはるかな片隅で考えながら、広間の中を見渡しました。
 白い塗料がくすんでる高い天井、幾つかの広告ビラが鋲でとめてあるだけの裸の壁面、コンクリートの床
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