、一種の誇りに似たものが、あなたの語調には籠っていました。それが次第に私の心を苦しめました。
「一口に言いましょう。あなた方は、あなたを含めてあなた方は、私とは異った種族です。私とは違った空気を呼吸してる人々です。そして私はそういう人々を、本能的に嫌悪します。自由とか平等とか人間性とかいう名のもとに、いろいろ理由づけも出来るでしょうが、そういうことをぬきにして、私はただ本能的に嫌悪します。本能的に……だから打明けて言えば、あなたのお父さんの森村源五右衛門という名前も嫌いです。私の名前だって一向香ばしくはありませんが、然し、源五右衛門は少しくひどい。名前は父親がつけてくれたもので本人の責任ではないとはいえ、改名することも出来るじゃありませんか。
「三浦さんがいくら骨折って下さろうと、また私とあなたが如何に愛し合っていようと、森村源五右衛門のお嬢さんと一介の出版編輯者の下っぱの木原宇一との結婚は、これは出来ますまい。私ははじめ結婚のことを殆んど考えていませんでしたが、それを考えねばならない段になって、そしてあなたからいろいろな話を聞いてるうちに、結婚の可能性が次第に薄らいでいった、そのこと
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