いた。そのわきに可なりの池があった。池の中に飛び込んでる大きな蛙や蝦蟇を、二人は額にねとねとした汗をにじませながら、長い竿の先でつっ突き廻った。
恒夫は写真帖なんかも持ち出した。
「お祖父さんやお祖母さんが、本当のお祖父さんやお祖母さんでなかったり、お母さんが本当のお母さんでなかったり、またお母さんにいろんな兄弟があったりして、そんなことが一度に分ってきたら、素敵に面白いだろうね。」
そして二人は、おどけたような眼を見合ってくすくす笑った。
「君は額がお父さんで、眼がお母さんらしいね。」と恒夫は云った。
「そう。お父さんは若くて立派だったんだね。」
「そうだよ、僕はちっとも覚えていないけれど……。」
父の写真を子供の時のからずっと並べて一度に眺ると、何だか滑稽な気がして仕方がなかった。祖父や祖母なんかのもやはりそうだった。そしてその感じが、実際の祖父や祖母に接する時にも、頭の隅につきまとって仕方なかった。
二人はどうかすると、祖父の悪い方の碁盤を持って来て、五目並べや囲碁の真似などをして遊んだ。そこへのっそり祖父がやって来て、囲碁の法を教えてくれることがあった。恒夫は影でくすく
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