不潔ではありませんか。陰湿な不潔さ、そこからも男くさい臭いが発散してきます。
 裸になると、男より女の方が不恰好だと言われています。それはそうかも知れません。胴のわりに足が短く、尻が大きくて、恰好はよくないかも知れません。けれどもそれを女は衣裳で補っております。衣裳は単に、寒さ暑さを防ぐだけのものではなく、姿を美しくするためのものでもありましょう。姿を美しくするためのその衣裳を、男のひとは何と思ってるのか、すぐに脱ぎたがり、肌を出したがります。肌を出してもよいのは、むしろ女の方ではありますまいか。女の肌はなめらかでこまかく、革のような男の肌よりどんなに美しいか分りません。それに、男のひとはいったい不精です。耳垢をため、鼻糞をため、肱や膝はざらざらです。人前でも平気で、小指で耳垢をほじくったり、人差指で鼻糞をほじくったりします。倉光さんにせよ、井上さんにせよ、クロを撫でまわし、鼻糞をほじくったその穢ない手で、お菓子をつまんで食べます。女は、私だって姐さんだって、そんなことは決して致しません。
 恥を知るがよい。そして廉恥心を持つがよい。
 姐さんが、絽刺したハンドバックを、赤珊瑚の帯留を
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