男ぎらい
豊島与志雄

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 男ぎらいと、ひとは私のことを言うけれど、そうときまったわけのものではありません。男のひとは、だいたいいいえ皆が皆、厭らしく穢ならしく、だから私は嫌いです。厭らしくも穢ならしくもなく、ほんとにすっきりしたひとがあったら、私だって好きにならないとも限りません。釈迦牟尼とかマホメットとかのことは知らないが、キリストなら、私は好きです。ミッションの学校にしばらくいたことがあるからそう言うのではありません。キリストはすっきりしています。悲しいほどすっきりしています。つまり、男くささがないのです。
 男くささ、それがどういうものか、私はしばしば考えたけれど、未だにはっきりしません。臭いだけのことではありません。体臭だけのことではありません。なにかこう、脂ぎったもの、不潔なもの、どぎついもの、むかむかするもの、そういうもの全体のようです。

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