同士の話です。男はいつも睾丸がさっぱりしていなければいけない。ということに二人は同意した上で、一人は言いました。
「そこで、僕は、毎朝起きると、睾丸を水で洗うことにしている。さっぱりしたものだ。」
も一人は言いました。
「僕は、いつも、猿股も何もかも脱ぎすて、素っ裸になって寝間着に着かえ、そして寝ることにしている。さっぱりしたものだ。」
聞いていて私は極りわるいよりもむしろ、呆れました。毎朝水で洗うことも、パンツ一つない素っ裸で寝ることも、どちらもへんなものです。
けれども、それはそれだけの理由があるに違いありません。つまり、そんなことをしなければ、股倉がさっぱりしないのでしょう。そんなことをしなければならないほど、股倉が、……なんと言ったらよいか、まあ、陰湿なのでしょう。そうです。男の股倉はみんな陰湿なのです。だから、いつも両股をひろげて、風通しをよくしたいのです。両股を女のようにつぼめて、風通しを悪くすると、ますます陰湿になって気持ちがわるいのです。
女の方が不潔だなんて、どうして言えますか、女はいつもさっぱりしたものです。男はさっぱりしていないのです。股倉が陰湿なんです。
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