れだって、あんなにぴかぴか光らしはしません。油が浮いて流れるように光っていて、どうかすると白く埃がくっついてることもあります。却って不潔です。その上ポマードの臭いと犬の臭いと一緒になると、とてもいやなものになります。倉光さんはいつでも、クマを撫でさすり膝に抱きあげることさえあります。男のひとはいったい、犬の臭いをどうして厭がらないのでしょう。厭がらないばかりか、むしろ好きなようです。
犬が好き、そしてポマードが好き。両方の臭いを一緒にすると、それは助平根性の臭いです。あ、とんだことを口走ったが、こうなったらもう後へは引けません。無茶苦茶に、何でも言ってしまいましょう。
倉光さんもそうですし、井上さんもそうですが、物に腰掛ける時、両の膝をひろく両側へひろげます。男のひとは皆そうします。電車の中などを眺めても、膝を両方にひろげて、自分の股の間はすいているのに、隣りの人とは股で押し合っています。なぜあんなことをするのでしょう。腰の骨組のせいではありますまい。股の間に男のあれがあるので、それが邪魔になるのでしょうか。
そのことについて、私はおかしな話を聞きました。井上さんが連れてきたお客
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