卓子を並べなおして、それぞれ席に就きました。ふしぎなことに井上さんまでが、中尾さんを送り出すところではありましたが、その席に腰を下してしまったのです。井上さんが土地の人と一緒に飲むなんてことは、これまでになかったのです。
「倉光君は、今日はまだ一度も来ないのかい。」
そんなことを、井上さんまでが、お島さんに尋ねています。
料理はなんにもいりません。摘み物だけで、日本酒のお燗をするだけです。姐さんも出て来たので、私は奥に引っこんでいました。顔を洗い手を洗いました。男くさくって、むかむかしました。中尾さんはもうお爺さんですが、それでもなんだかいやです。少しく猪首で、肉の厚ぼったいその頸筋が、陽やけしてざらざらしてるくせに、へんに脂っこい感じです。
しばらくして、若い男たちは帰ってゆきましたが、中尾さんと井上さんは居残って、特別のウイスキーをビールにわって、飲みました。ひそひそと話しあったり、ふいに高笑いをしたりします。密談のしめくくりをしてるのでしょうか。それとも、猥談でもはじめてるのでしょうか。姐さんまで一緒になって笑っています。もうつくづく厭になりました。
そのあと、中尾さ
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