お島さんと二人きりです。
もうだいぶ遅くなって、五六人の男がはいって来ました。ずいぶん酔ってるようでした。
「倉光君は来ていないか。」
「いらっしゃいませんよ。」とお島さんが応対しています。
なんだかごたごたして、その人たちは卓子に就き、安物のウイスキーを飲みはじめました。
「倉光君はどうした。隠してるんじゃあるまいね。」
お島さんはもう相手になりません。
「おばさんじゃ信用ならん。美枝ちゃんはどこへ行った。」
おーい、美枝ちゃん、と呼ばれて、私は隠れてるわけにゆかず、出て行きますと、顔を知ってる人たちです。
「倉光君は来ていないのかい。」
「ほんとに来ていないんだね。」
「どこかに隠れてるんじゃあるまいね。」
一度に問いつめられて、私は困りました。
「美枝ちゃんがそう言うなら、ほんとだろう。も少し待ってみるか。」
そしてウイスキーをつがせられてるうちに、誰かが、ダンスをしようと言い出しました。私はダンスは知りませんし、男のひとなんかと踊りたくもありません。しかしつかまってしまいました。お島さんがレコードをかけます。何のレコードだって構やしません。卓子を少し片寄せて、そこの
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