にか見立ててくるよ。」
 倉光さんは親しげな口を利き、どんな物が好きかなどと尋ねたりして、ウイスキーをいつもよりよけい飲みました。
 物乞いじゃあるまいし、貰ってやるものか、と私は思い、なにか仕返しをしてやろうかとさえ考えました。
 ところが、倉光さんばかりでなく、井上さんまで、私に物を持って来てくれました。模様のあるハンカチとか草履とかいうようなものです。くさい息がかかってるようでいやでした。私がもじもじしていると、井上さんは私にとりあわず、ちょっぴり髭のある肥った顔を、姐さんの方へ向けて、ほかの話を始めるのです。
 私はみんなからばかにされてるようでもあり、そっと目をつけられてるようでもあります。男ってどうしてこんなに厚かましく図々しいのでしょう。
 この気持ち、姐さんには分らないようです。私に代って姐さんが、倉光さんにも井上さんにもお礼を言ってくれます。
 町のお祭りの晩には、特別に酒がたくさん用意されて、誰にでも飲ませることになりました。表には、提灯と桃の花が吊してあります。忙しくて、私はだいぶ疲れました。井上さんが来ていて、姐さんは二階にあがってることが多いので、店の方は私と
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