し》げて二人の方を見下ろしながら、羽ばたきまでしています。二人は半《なか》ばやけになって、その椋鳥を撃ち始めました。ところがこんどは、どうしても弾丸《たま》が当たりません。椋鳥《むくどり》はぴょいと身を交わして、弾丸をみんな外《そ》らしてしまいます。二人は何十発となく弾《う》ちましたが、一羽も弾ち落とすことが出来ませんでした。しまいには力がぬけて、鉄砲を杖《つえ》に佇《たたず》みました。そしてよくよく見ると、今まで椋鳥がとまってると思った枝には、散り残ったわずかな椋の葉が、明るい月の光りを受けて、嘲《あざけ》り顔にきらきら光っていました。
 二人はまた化《ば》かされたのでした。こんなふうではいつまでも狸《たぬき》に打ち勝つことは出来ません。もう御隠居《ごいんきょ》に相談する外はないと、二人は考えました。

      三

 御隠居というのは、村一番の学者で、何でも知ってる老人でしたが、皆が大変尊敬して、「御隠居、御隠居」と呼んでるのでした。次郎七と五郎八とは、翌日早くその家へ行きました。そして前からのことをすっかり話した後、何とかその狸をやっつける工夫《くふう》はあるまいかとたずねま
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