ら眼が見えないのかな」と次郎七が言いました。
「きっと眠っているんだろう」と五郎八が言いました。
それから二人は、椋鳥を片端《かたはし》から撃ち落としました。二十羽あまりもいた椋鳥を、すっかり撃ってしまいました。それを二人で分けて、喜んで帰ってゆきました。
次郎七は勢いよく家に飛び込んで、狸《たぬき》はいなかったがこんな物を取ってきた、と言いながら椋鳥を畳《たたみ》の上に放り出しました。その顔をお上《かみ》さんはじっと見ていましたが、思わずぷっとふきだしてしまいました。
「何を笑うんだい」と次郎七はたずねました。
「だっておかしいじゃありませんか。椋鳥だなんて言って……」
見ると、椋鳥だと思ったのは、みんな椋の葉だったのです。
そこへ、五郎八がやって来ました。ぷんぷん怒っていました。五郎八の方でも、椋鳥だと思ったのは、家へ帰ると椋の葉だったのです。
「どこまでも人を馬鹿にしてる」と二人は怒鳴《どな》りました。
こうなると、なおさらすててはおけません。二人は翌晩も八幡様《はちまんさま》の森へ出かけました。そして椋の木を見上げると、またたくさんの椋鳥がとまっています。小首を傾《か
前へ
次へ
全12ページ中5ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
豊島 与志雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング