のです。
 二人はばかばかしいやら口惜《くや》しいやらで、じだんだふんで怒りました。きっと狸に化《ば》かされたに違いないと、そう思いました。そして、是非《ぜひ》とも狸を退治《たいじ》してやろうと相談しました。

      二

 翌日二人は、八幡様《はちまんさま》の小さな森に出かけて、狸の巣を隈《くま》なく探し廻りました。しかしどこにもそれらしいのは見当りませんでした。けれども、晩にはまた出て来るかも知れないと思って、月が出るのを待って再《ふたた》び行ってみました。
 月は前の晩と同じように、綺麗《きれい》に輝いていました。昼間のように遠くまで見渡せました。二人は八幡様の前へ行って、例の椋《むく》の木を見上げました。すると狸はいませんでしたが、たくさんの椋鳥《むくどり》がその枝にとまっていました。
「あいつでも撃ってやれ」と二人は言いました。
 そして二人一緒に鉄砲の狙《ねら》いをつけて、打ち放しました。二羽の椋鳥がひらひらと落ちてきました。二人はそれを拾い上げました。それからまた見上げると、他の椋鳥《むくどり》は逃げもしないで、ちゃんと元の枝にとまってるではありませんか。
「晩だか
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