《むち》でぴしりと打ちつけ、男がちょっとよろめいて立ちなおるところを、こんどは、そのわき腹を足でけりあげました。男は気絶してばったり倒れました。
 けれど、丸彦はもうその男にかまっておれませんでした。そのすぐむこうに観音様《かんのんさま》のお堂の前に、もひとり、大きな男がつっ立っているのです。
 やはり黒いみなりで、ひげをぼうぼうとはやした大男でした。恐れるようすもなく、丸彦の方をじっとにらみつけていました。
 丸彦も大男をじっとにらみつけました。
 大男は一足すすんで言いました。
「おまえは堅田《かただ》の顔丸の丸彦か」
「そうだ。おまえはなにものだ」と、丸彦はいいました。
「おれは、鞍馬《くらま》の夜叉王《やしゃおう》だ」
 そして、ふたりはしばらくにらみあっていましたが、夜叉王は、地面に倒れている男をさしていいました。
「その男をもらっていくから、こちらにわたせ」
「わたさないぞ。ほしかったら、腕ずくでとってみろ」
 そういって、丸彦は鞭《むち》を捨て、両手を広げてつっ立ちました。夜叉王《やしゃおう》も、腰《こし》の大きな刀をそこにおき、両手をひろげてつっ立ちました。
 二人は、
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