長彦と丸彦
豊島与志雄
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)近江《おうみ》の国
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#ルビの「おうみ」は底本では「おおみ」]
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一
むかし、近江《おうみ》[#ルビの「おうみ」は底本では「おおみ」]の国、琵琶湖《びわこ》の西のほとりの堅田《かただ》に、ものもちの家がありまして、そこに、ふたりの兄弟がいました。兄はたいへん顔が長いので、堅田の顔長《かおなが》の長彦《ながひこ》といわれていましたし、弟はたいへん顔が丸いので、堅田の顔丸《かおまる》の丸彦《まるひこ》といわれていました。
顔長の長彦は、体がやせて細く、少しも力がありませんでしたが、たいそう知恵がありました。そして、京の都からやって来て、そこに隠れ住んでいる、年とったえらい先生について、いろいろなことを学んでいました。
顔丸の丸彦は、知恵はあまりありませんでしたが、体がまるまるとふとって、たいそう力があり、むじゃきな乱暴《らんぼう》者で、野原や山を駆け廻ったり、剣や弓のけいこをしたりしていました。
このふたりの兄弟は
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