た。父にも母にも尋ねかねた。
しまいに私は、祖母に打ち明けてみることにした。小さい時から私は、祖母に一番甘ったれていたし、祖母には何でも打ち明けられたし、祖母も私を一番可愛がっていた。けれど今、祖母は重い病気で寝ている。悪いことだけれど、折を窺わねばならなかった。
看護婦がお風呂にはいっており、病室には他に誰もいず、そして祖母の気分もよさそうな時、私は言い出してみた。
「お祖母さま、あたしね、面白い話を考えついたのよ。」
祖母は弱々しい微笑を浮べた。
「どんなこと。話してごらんなさい。」
「あたしが考え出したのか、何かで読んだのか、それは分らないけれど……。」
私はへんに頬が熱くなる思いだった。それを押し切って、のっぺらぽうの顔の話をした。やはり男と女のことにはしたが、愛し合ってるということは省いた。
祖母はかすかに頷きながら聞いてくれたが、話がすんでも何とも言わなかった。
「ね、お祖母さま、こんな話、どこかでお聞きなすったことありませんの。」
祖母は頭を振って、天井の方へ眼をやっていたが、暫くして言った。
「あんたが拵えたのでないとすると、そのお話は、日本のものより、西洋
前へ
次へ
全28ページ中5ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
豊島 与志雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング