も》ち、人形の側《そば》に立って、挨拶《あいさつ》をしました。
「この度《たび》私が人形をひとりで踊《おど》らせる術《じゅつ》を、神《かみ》から授《さず》かりましたので、それを皆様《みなさま》にお目にかけます。このとおり人形には、なんの仕掛《しかけ》もございません」
そういって彼《かれ》は、手の鞭《むち》で人形を二、三|度《ど》叩《たた》いてみせました。それから鞭《むち》を差上《さしあ》げていいました。
「歩いたり、歩いたり」
人形は歩きだしました。
「廻《まわ》ったり、廻《まわ》ったり」
人形はぐるぐる廻《まわ》りました。
「踊《おど》ったり、踊《おど》ったり」
人形はおかしな恰好《かっこう》で踊《おど》りました。
「飛《と》んだり、跳《は》ねたり」
人形は飛《と》び跳《は》ねました。
見物人《けんぶつにん》は驚《おどろ》いてしまいました。なにしろ人形が独《ひと》りで動《うご》き廻《まわ》るのは、見たことも聞《き》いたこともありません。皆《みな》立ちあがって、やんやと喝采《かっさい》しました。中には不思議《ふしぎ》に思う者もあって、舞台《ぶたい》を調《しら》べてみたり、人
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